毎日の食卓で何気なく使っている醤油やソース。実は、その使い方をちょっと変えるだけで、血圧を下げる効果が期待できることをご存知ですか?
「いつものように醤油をかけていたけど、つけるだけでそんなに違うの?」と思うかもしれません。でも実は、この小さな工夫こそが、健康への大きな一歩なんです。
日本人の塩分摂取量、実は世界でもトップクラス
まず、私たち日本人がどれくらい塩分を摂っているかご存知でしょうか?厚生労働省の「令和4年国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日の平均塩分摂取量は9.7g(男性10.5g、女性9.0g)となっています 厚生労働省。
でも実は、私たちの体が本当に必要とする塩分は、1日わずか1.5gほど。それなのに、なぜこんなにたくさん摂ってしまうのでしょうか?
その理由の一つが、醤油、味噌、塩などの伝統的な調味料を多用する日本の食文化にあります。おいしい和食には欠かせない調味料ですが、同時に塩分もたっぷり含んでいるのです。
塩分と血圧の深〜い関係
では、なぜ塩分を摂りすぎると血圧が上がるのでしょうか?体の中で起こっているメカニズムを、わかりやすく説明しましょう。
1. 血液中のナトリウム濃度が上がる 塩分(ナトリウム)を摂りすぎると、血液中のナトリウム濃度が高くなります。
2. 体が水分を溜め込む 体は「濃くなった血液を薄めなきゃ!」と判断し、水分を溜め込もうとします 国立循環器病研究センター。
3. 血液量が増える 水分が増えることで、血管を流れる血液の量が増加します。
4. 血圧が上昇 増えた血液が血管の壁を押す力が強くなり、血圧が上昇するのです。
このように、塩分の摂りすぎは血管にとって大きな負担となり、高血圧の原因となってしまいます。
高血圧が招く恐ろしい病気たち
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がほとんどないまま、静かに体を蝕んでいきます。
血圧が高い状態が続くと:
- 脳卒中:血管が破れたり、詰まったりする
- 心筋梗塞:心臓の血管が詰まる
- 心不全:心臓の機能が低下する
- 腎臓病:腎臓の血管がダメージを受ける
これらの病気は、どれも命に関わる深刻なものばかりです。
専門機関が推奨する塩分量はどれくらい?
健康を守るために、各専門機関は以下の塩分摂取量を推奨しています:
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
- 男性:7.5g未満/日
- 女性:6.5g未満/日
日本高血圧学会
- 高血圧の人:6g未満/日
- 血圧が正常な人も:可能であれば6g未満/日
現在の日本人の平均摂取量9.7gと比べると、かなりの減塩が必要ということがわかります 日本高血圧学会。
調味料の塩分含有量を知っておこう
減塩を始める前に、よく使う調味料にどれくらいの塩分が含まれているか知っておきましょう:
小さじ1杯(5ml)あたりの塩分量
- 濃口醤油:0.9g
- 薄口醤油:1.0g
- 中濃ソース:0.3g
- ケチャップ:0.2g
- マヨネーズ:0.1g
醤油の塩分量は、ソースの約3倍、マヨネーズの約9倍もあることがわかります 高血圧注意!塩分ワースト1調味料。
「かける」より「つける」の科学的根拠
では、本題の「かける」より「つける」方が良い理由を見ていきましょう。
近江八幡市の栄養士が実際に行った実験結果が、とても参考になります 近江八幡市:
実験1:アジフライにソース
- かける:2.5〜6g使用
- つける:1〜1.6g使用 → つける方が約40〜80%も使用量が少ない
実験2:刺身3切れに醤油
- かける:1.1〜1.4g使用
- つける:0.7〜1.0g使用 → つける方が約20〜30%使用量が少ない
実験3:冷やしうどんにめんつゆ
- かける:12〜18g使用
- つける:8〜16.8g使用 → つける方が約7〜33%使用量が少ない
なぜ「つける」方が塩分摂取量が少ないの?
この差が生まれる理由は、物理的なメカニズムにあります:
「かける」場合の問題点
- 量の調整が困難:上からかけると、どれくらいの量をかけているかわかりにくい
- 余分な調味料が皿に溜まる:お皿の底に溜まった調味料も一緒に食べてしまう
- 全体にかかってしまう:食べ物の表面全体に調味料がついてしまう
「つける」場合のメリット
- 必要な分だけ使用:食べる分だけ小皿に取り分けるので、使用量をコントロールしやすい
- 無駄が少ない:余った調味料を摂取することがない
- 部分的な味付け:食べ物の一部分だけに調味料をつけるので、全体の塩分量が抑えられる
「つける」をさらに効果的にする工夫
単に「つける」だけでも効果的ですが、さらに工夫することで減塩効果を高められます:
1. スプレー容器を活用 近江八幡市の実験では、スプレー容器を使った場合、刺身3切れの醤油使用量が0.5gとなり、つける方法よりもさらに少なくなりました。
2. 片面だけにつける 刺身や寿司の場合、両面ではなく片面だけにつけることで、さらに塩分摂取量を減らせます。
3. ネタ側につける 寿司の場合、しゃり(ご飯)側ではなく、ネタ側に醤油をつけることで、しゃりに含まれる塩分と合わせて摂取する塩分量を調整できます 国立循環器病研究センター。
4. 小皿を活用 調味料を小皿に取り分けることで、使用量を視覚的に把握しやすくなります。
調味料別「つける」テクニック
醤油の場合
- 刺身:ネタの片面のみにちょんちょんとつける
- 餃子:小皿に取り分けて、餃子の角だけにつける
- 冷奴:豆腐の表面にほんの少しだけつける
ソースの場合
- とんかつ:カットした一口大の断面にだけつける
- お好み焼き:フォークで刺した部分にだけつける
- フライ:小皿に取り分けて、必要な分だけつける
その他の工夫
- ポン酢やレモン汁など、酸味を活かした調味料を併用する
- 香辛料や薬味(わさび、生姜、にんにくなど)で味にアクセントをつける
- だし汁の旨みを活かして、調味料の使用量を減らす
減塩の効果はどれくらいで現れる?
「減塩を始めたけど、いつから効果が出るの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
研究によると:
- 1日1gの減塩で血圧が1mmHg下がる 大塚食品
- 1日6g未満の減塩で、収縮期血圧が4〜6mmHg、拡張期血圧が2〜3mmHg低下
つまり、日本人の平均摂取量9.7gから6g未満まで減塩できれば、血圧を3〜4mmHg程度下げることが期待できるということです 医師がおすすめする減塩の方法。
家族みんなで取り組む減塩生活
減塩は一人で頑張るよりも、家族みんなで取り組む方が続けやすく、効果的です。
子どもの頃からの習慣づくり 子どもの頃から薄味に慣れ親しむことで、将来の生活習慣病予防につながります。
お年寄りへの配慮 年齢とともに味覚が鈍くなりがちですが、だしや香辛料を活用することで、塩分を抑えながらもおいしい食事を楽しめます。
外食時の注意点
- メニューの栄養成分表示をチェック
- 調味料を追加する前に味を確認
- 麺類のスープは残す
- 漬物や佃煮は控えめに
無理なく続けるコツ
減塩は継続が最も大切です。無理をし過ぎると続かないので、以下のポイントを心がけましょう:
段階的に減らす いきなり大幅な減塩をするのではなく、少しずつ慣らしていきましょう。
代替手段を活用
- 減塩調味料を使用
- 酸味や香辛料で味にメリハリをつける
- だしの旨みを最大限に活用
記録をつける 食事日記をつけることで、自分の塩分摂取パターンを把握できます。
「つける」習慣で得られるその他のメリット
塩分摂取量の減少以外にも、「つける」習慣には様々なメリットがあります:
1. 味覚の変化 薄味に慣れることで、素材本来の味を楽しめるようになります。
2. 経済的メリット 調味料の使用量が減ることで、食費の節約にもなります。
3. 料理の幅が広がる 素材の味を活かした料理を作るスキルが身につきます。
4. 家族の健康管理 家族全体の健康意識が向上します。
まとめ:小さな変化が生む大きな健康効果
「かける」から「つける」への変化は、とても簡単で取り組みやすい減塩方法です。近江八幡市の実験結果が示すように、この小さな変化だけで20〜80%もの塩分摂取量削減が可能になります。
毎日の積み重ねが、将来の健康を大きく左右します。今日からでも始められる「つける」習慣で、血圧を下げ、心臓や血管の健康を守っていきましょう。
最初は物足りなく感じるかもしれませんが、徐々に薄味に慣れて、素材本来のおいしさを発見できるはずです。家族みんなで取り組むことで、より効果的で楽しい減塩生活を送ることができるでしょう。
あなたの健康な未来のために、今日から「つける」習慣を始めてみませんか?
参考文献
- 厚生労働省「令和4年国民健康・栄養調査」https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010765.php
- 国立循環器病研究センター「減塩食について」https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/low-salt/
- 日本高血圧学会「スポット尿による食塩・カリウム摂取量推定ツール」https://www.jpnsh.jp/natkali-e/
- 近江八幡市健康推進課「しょうゆやソースは上から『かける』より『つける』」実験結果 https://www.city.omihachiman.lg.jp/material/files/group/165/2311genenreshipi.pdf
- マイナビ看護師「高血圧注意!塩分ワースト1調味料はどれ?」https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/lifestyle/20250610-2179897/
- 国立循環器病研究センター「食事療法について」https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet02/
- e-Medical Japan「身近にある血圧を下げる食べ物一覧」https://e-medicaljapan.co.jp/blog/blood-pressure-reduce-food-reduce-salt
- 大塚食品「塩分について【基礎編】」https://www.otsukafoods.co.jp/enjoy/health/index02-1.html
- 茨城県「おいしく減塩するコツをご紹介します!」https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/chiiki/kenko/oishiostyle.html
- 厚生労働省「食環境戦略イニシアチブ」https://sustainable-nutrition.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/initiative_texta.pdf


